消尽の日記

中身も外見もまぁ覇気がない

「Hotline/Window/Venus」短歌12首

 

Hotline/Window/Venus

朝永恵

 

ももの香でべとべとになるトーストをそばで見ていた小さな花瓶

 

食卓は七日に渡って囲まれた 熟れたバナナのヘタをもぎった

 

冷たさが背を伝う汗、擦りむいたフードコートのサーティーワン

 

盛夏 サツキの首が冷えている引き算の良さとはこのことか

 

 

そのチャリの前ブレーキは引かないで 小石を蹴って曲がるハンドル

 

風を薙ぎ草木を梳いた円盤のエンジンだけが聴こえる不在

 

段取りは手短にかつ迅速に 毒短刀を壺から抜いた

 

 

映し出す夕陽が塗ったスクリーン 麦の波間で惑う金星

 

忘れてた甲虫の背から立つ匂い暮れた並木の袖の幼年

 

窓枠に溢れて落ちた眩しさとカーテン柄の床は何処(いずこ)へ

 

買い物が下手くそなので本日は二度目のコンビニ二度目のアイス

 

もしもしと聞かれて答えたる形 「作っているのは短歌なるもの」