消尽の日記

中身も外見もまぁ覇気がない

8月の自主月詠「盛夏喪失」「桃を剥いた日」「遊泳」俳句5句短歌11首

 

朝永恵

 

「盛夏喪失」

電波塔入道雲の中に立つ

赤信号コルクメットに死に羽虫

白桃の澱を皿から啜りをり

蝉の声老父の皺に影落ちる

夏の夜にエアコンの音布団に独り

 

 

「桃を剥いた日」

私、フルーツナイフを持っていて、暦をめくるゴミの日はまだ

浴槽で桃の皮を剥くときのゴム手袋はまだ温かい

切り分けてブルーシートに滴った汁を集めて口に含める

器から零れたあなたを抱きとめる桃の仁には毒性がある

新しい日の始まりを背に受けて桃の腐肉を淀川に撒く

 

 

「遊泳」

夕暮れへ転がってゆく放課後を金魚の入った壺と過ごした

眩しさを遮った手に付いている瞳が僕を見下ろしていた

パンくずを放る老父を突き抜ける鳩の轍が黒ずみになる

鉄橋に雨の匂いが染みてまばたき沸き立つ怒りのような雷

朝顔を合わせた彼は中3で、臍の緒がまだ繋がっている

朝焼けをプールの底から仰ぎ見る肉体的な快感と青