消尽の日記

中身も外見もまぁ覇気がない

5月の月詠「真っ青」「箱」短歌15首

 

5月の月詠

朝永恵

 

「真っ青」

 

濡れているアスファルトから立つ匂い 這いつくばって血の味がする

 

Bloom into you ぼくたちは使い尽くした花火みたいに

 

白昼のロードサイドを歩きゆく腕を振ったら脚が出るから

 

目を閉じる・ステップを踏む・息をする 河原の石を飛び跳ねるよう

 

真っ青の夜明けを齧る溶けた夜のベタつく指の節を舐め取る

 

心臓が早鐘を打つ藍色の外縁に立ち霞む森ビル

 

峠には鹿の死骸が横たわり朝の光をその身に映す

 

セックスの隠喩としての花束をウテナで始めて知ったあの日は

 

外よりも暗い部屋から窓をみるカーテンの外 5月遠雷

 

長袖を半袖が簒奪した皐月 冷えた春を蹴散らした夏

 

 

「箱」月ノ美兎に寄せて

 

箱の中 折り畳まれた世界から月の裏面へ軽やかに跳ぶ

 

配信のこんがらがった残像を目で追いかける白昼の夢

 

ヴァーチュアルの夢を見ている(目を瞑る)月の裏から透かすあなたは

 

月⇆世界 枠から飛び出たロケットのほどけた熱が結ぶ航路を

 

月の輪をスイングバイで振り切って世界へ帰る 君はこの中