1月の月詠・短歌17首
朝永恵
「流体の砂」
コメダにて小バエ横切るおぐらあんパーテーションに阻まれている
スプーンですくった最後の一口に逆さに光る歪んだ私
知らぬ間に食いしばっていた臼歯 エナメル質が削れて染みる
シロサギとマガモの足が突き刺さる波打つままの流体の砂
ぼんやりとふとんに寝ている間にも休むことない内燃機関
ただ布に挟まれていて目が覚めるただ冷えた部屋、小さいおうち
なんとなく音響機器に乗せている目線の高さにサイレンと犀
ただ歩く駅前→宅地→公園へ、日々は流れる街から街へ
高架下 飲食店のダクトから32℃の残飯の風
下向きに垂れる半月の下を通る阪急沿線の窓
コーヒーとジャンプを買いに5時半にコンビニへ行く空はまだ星
「静かな跳躍」
曲線で構成された柄物の後ろ姿を撫でつけている
撫でつけた獣はゆるく伸ばされてしなやかさだけ床に染み付く
ラックから冷蔵庫へと移るとき僅かな淀みと静かな跳躍
餌皿を埋めるがためにカリカリを入れたみたいなフルグラを食む
日中に水晶体に溜め込んだ双星が持つ淡色 緑